地車の彫り物

地車には様々な動物や人、自然をかたどった彫り物があります。各町の地車によって皆彫り物は異なり、また似たような題材が彫られていてもそれを彫った人(彫り師)によりまったく異なった趣のあるものとなります。我が東之町の彫り物は明治20年頃に新調された当時のもので、120年以上の時を経ても大部分は現存しています。有名な彫り師もいる中で残念ながら誰が彫ったかは不明ですが、これからも「地車の色」として末永く受け継いでいきたいものです。
このコーナーではその彫りを地車の部位別に紹介しています。もちろん、生で見る彫り物の魅力にはかなわないですけどね!

  
【獅噛】 
”しがみ”と読みます。獅子を象っており、地車の顔のようなものです。単に「鬼板」とも呼ぶことも多いです。地車前後に1匹ずつ、男屋根の最後尾にもいます。

後方からみた獅噛

  【拝懸魚】
(正面、車板の真上)
”オガミゲギョ”と読みます。

日本神話に出てくる有名な一場面です。スサノオノミコトが出雲の国で八つの首を持つ化け物、ヤマタノオロチの生贄となるクシナダヒメを助けるためオロチに酒を飲ませ酔っぱらったところを退治します。退治したオロチの尾を切ると、”アマノムラクモノツルギ”という三種の神器の一つが出てきます。
 【隣懸魚】 
正面、向かって右下。”トナリゲギョ”(又はケタカクシ)とも呼びます。 

   【車板】
地車の正面、獅噛の真下です。くるまいたと読みます。ご存じ、四獣神のうちの一つ、東方の神、青龍です。宝珠をつかむ様子が描かれています。四獣神は西は白虎、南は朱雀、北は玄武ですね。
【枡合】
上段はますあい。牡丹に夫婦唐獅子が描かれています。
【虹梁】
下段はこうりょう。牡丹に親子唐獅子が描かれています。

獅子は百獣に君臨する王。牡丹の花を好むと言われることから調和して絵になるものの組み合わせとされています。 
 
  【三枚板 正面向かって右】
三枚板(さんまいいた)は地車の後方の壁面を作っています。ここに彫り物があるのは大阪型地車の特徴です。東之町の地車も元は大阪型なのでしっかりあります。写真は飛龍退治の風景です。飛龍の顔は実は平成5年の大改修までは鳥の顔でした。(改修で飛龍に変更)
【三枚板 正面向かって左】
反対側の図柄は源平合戦の一場面です。源氏の水連の名人、 大胡小橋太が六十人力の強者、平家の柄六郎を海に引きずり込もうとする場面です。今にも動き出しそうな迫力ですね!
 
  【三枚板 後面】
だんじり祭り駆け出しの頃はよく後ろを押していました。(今もあんまり変わりないけど・・・)後ろから地車を押す若衆には必ず目にとまるこの彫り物、どんな場面だろうな、と想像をふくらませていました。
これは、加藤清正の虎退治。秀吉の朝鮮出兵の際、加藤清正は山狩りを行いました。その時突如、竹林から出てきた虎を自身の十文字槍で突き伏せ、仕留めます。 
個人的にはこの彫り物が一番好きですね。
 【車板 後面】
正面の車板は宝珠をつかむ青龍でしたね。後方は虎と鷲です。口をあけている虎の舌のうねりももちろん彫り物です。すごい!精巧!!
 
  【拝懸魚 後面】
鷲の猿つかみです。猿を神ととらえて描いているようです。 
 【脇障子】
わきしょうじ。是非見ていただきたい彫り物です。写真左は右側の脇障子、写真右は左脇障子です。
写真左:獅子の子落とし
写真右:夫婦唐獅子
平成22年の大改修前までは平敦盛と熊谷次郎直実でしたが、今回は獅子をテーマにしています。
笠木の部分にも獅子を配して、親から子、子から孫へ、の一族繁栄をも意味しています。
   
     【後方からみた脇障子】
写真左:地車左側の脇障子 ”風神”
写真右:地車右側の脇障子 ”雷神”
【木鼻】
きばな。獅子が象ってあります。 
 
     【角障子】
すみしょうじ。地車の後方角に左右1対ずつあります。これも大阪型地車の特徴です。平成22年の改修の際には取り外してしまおうと議論もありましたが、素晴らしい彫り物には変わりないことから残すことにしました。
写真左:右後ろ角障子
写真右:左後ろ角障子
 【土呂台】
どろだい。地車底辺を形作る柱のような役割です。平成22年の改修の主目的として老朽化した土呂台の新調がありました。大佐特有の波のうねりを残しつつ、新たな波と龍の美しさをかもしだしています。(写真は左側)
 
  【後方の扉の彫り物】
ひがん太もだんじりばやしを叩く以上、よくここを開け閉めします。なのに何の彫り物か全然知らなかった!(笑)
これは、源氏の熊谷次郎直実が海に逃げようとする平家の平敦盛を呼び止め、「名だたる将なら逃げずに正々堂々とかかってこい!」と威勢をふるう有名な一場面です。
 【土呂台の末端】
改修前までは波のうねりを模した形となっていました。箱金物には前正面に「東町區」、後正面に「東之町」の文字を刻み、より神戸型に近い地車となりました。
(写真は後正面)
 

まだまだ!ここでは紹介しきれないほどの彫り物が地車には施されていますが、ひがん太の知識不足という観点とホームページの容量不足という観点からこのへんでお開きということでご勘弁願いたい!(笑)
まだまだ、地車の見所はたくさんありますので是非、5月の祭りの時期には見に来て下さいね!



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